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あとがき 怨念の時代を越えてゆくために

2016.2.28 たねと食のおいしい祭 ドキュメント
text by 間宮俊賢(カフェスロー/たねと食のおいしい祭vol.4統括責任者)

あとがきにかえて、今回の企画書から、テーマ「味覚をはぐくむ、たねをまもる」についての解説を転載します。
「怨念の時代」という一見似つかわしくない、恐ろしげなキーワードについて僕が初めて語った時、カフェスローのスタッフは目を輝かせて深く頷きながら聞き、想いを受け止めてくれました。
ここに書いたようなことを、イベント内で強く前面に打ち出したわけではありません。事には順序や段階があるし、全て出せば良いというものでもないからです。それでも、コアメンバーに熱が共有されていれば、それは必ず場に現れるし、祭りのあとにも灯り続けて、時間をかけて伝わっていくものと信じています。
まだまだ書ききれない想いもエピソードもたくさんあるのですが、またの機会に。参加してくださった、心を寄せてくださった全ての方に感謝します。


テーマ「味覚をはぐくむ、たねをまもる」について

今回の「たねと食のおいしい祭」では、渡辺智史監督の短編映像「在来作物で味覚のレッスン」を下敷きに、会場全体の共通テーマとして「味覚をはぐくむ、たねをまもる」を設定しています。

「味覚のレッスン」とは、90年代以降フランスで発展した味覚教育の、最も重要なプログラムのひとつです。子供たちの味覚や表現力を養い、普段の生活で触れる機会の減少している本物の味や伝統的な食文化を伝えていくことを目的としています。食生活の乱れや生活習慣病増加への問題解決として注目を集め、今では国家的イベントとして取り組まれています。

「在来作物で味覚のレッスン」はその名の通り、山形県において食育の題材として在来作物を取り入れている現場を取材した映像です。私たちは「味覚のレッスン」と在来作物の取り合わせに、単純な足し算にとどまらない、深い可能性を感じました。

子供たちは映像のなかで、在来作物を通じて、地域の歴史や風土、受け継がれてきた人の想いに触れる機会を得ます。そして、自分こそがバトンを受け取り、次の世代に受け継いでゆく当事者であるということを、作物を通して自然に学んでゆきます。

在来作物の持つ個性や、繊細な魅力を感じ取り、表現し、生かしていくことのできる味覚や感性は、決してデータ化して保存できるようなものではなく、ひとりひとりの子供たちの身体を通じてしか受け継いでいくことができません。まして人の想いは尚更です。

いつか子供たちが成長して、そのことに気づいた時、在来作物を通じて自分の身体と風土のつながりを感じられたなら、たねをまもるということが単なる道徳を大きく飛び越えて、自分が故郷にとって「取り替えのきかない」存在なんだという生きる誇りにさえつながるのでは、と思うのです。

グローバル化とインターネットを通じて世界が果てしなく均一化され、単一的な価値観のもとで自己が序列化されていく時代です。自分が自分である意味がどこまでも希薄化され、容易に「取り替えのきく存在」であるかのような無力感、生きにくさが社会に蔓延しています。

このような生きにくさは、ISにつどう若者が世界に抱く「怨念」にも通底し、今までのどの時代にもなかったものです。私たちの子供たちは、これほど困難な時代に向き合っていかなくてはいけません。
このような時代状況に対し、在来作物で何かできるなどという考えは、人によっては「何を大げさな」と言われるかもしれません。まして今まさに生きにくさに喘ぐ世代の当事者からすれば、まるで綺麗事、絵空事のように聞こえてしまうのかもしれません。

しかし、もしこのような取組みが、「地域の食文化と優れた味覚こそ、守り育む文化資源である」というコンセンサスのもと、長年にわたり広く取り組まれていくとしたら、どうでしょうか?

「自分(たち)の身体でしか守れない、未来につないでいけないものがこの世界に存在している」という気づきは、この先、社会へと漕ぎだしていく子供たちの心を、厳しい時代から守ってくれるはずです。

そして社会全体で、このような時代性の根源を包摂し、乗り越えていく知恵を育んでいくことにまで、つながるのではないでしょうか。

たねと食のおいしい祭 公式サイト  




 





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